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『度胸づけ訓練』 別ver
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2025-11-0118:18
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作成者:
faceKOIMARI
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作者コメント:
以前アップした動画の別バージョンです。ーーーーーーー ストーリー ーーーーーーー『度胸づけ訓練』憧れていたダンス部に入部して一か月。\n彩希は戸惑っていた。\n――私は、まだ覚悟が足りなかった。先輩たちは本当に、裸で踊っていた。\n下着を脱いで、ためらいなく全力で踊る。\nだけど私は――\nまだこの体操服を着てられることに、安心してしまってる。\n体育の時間、「ダサくて嫌い」と言っていたのに。火曜日の練習あとだった。\n智代ちゃんと動きの確認をしているとき、遥部長から声をかけられた。「彩希ちゃん、そろそろ“度胸づけ訓練”の時期だね。」\nその話がはじまるとまわりの先輩たちが、きゅっと口元をひきしめる。\n――ああ、やっぱり本当なんだ。\nその空気で理解した。『度胸づけ訓練』\nそれは新入部員が、告知なく校内のどこかに立ち、決められたダンスを披露する伝統行事。\nしかも、何も着けずに――\nそのときはパンツ一枚身に着けることが許されない。心臓の音が早くなる。\nなにか声を出そうにも、口が動かない。\n不安と、恥ずかしさと、混ぜこぜの何かが喉につかえる。\n遥部長は、優しく話した。\n「大丈夫。みんな超えてきた道なんだから。」\n――そうだった。\n私はこのことを知っていても入部したんだ。\n……だから、逃げるのは違う。\n恥ずかしいのなら、それは、乗り越えるためのハードルなんだ。放課後の校舎は静かだけど、まだ生徒は残っている。\n階段の陰、ちょっと開いたドアの向こう。\nどこかに誰かの気配がある。\nそんな見えない誰かの気配が、わたしを怯えさせる。\n制服を着ていないだけで、学校は別世界のように見えた。指定された場所は旧校舎の角の廊下。\n入学式のとき以外、あまり使わない廊下だ。\n遥部長が笑顔で私に手を振る。\n私は、震える指でパーカーの裾をつかんだ。\n「おねがいします。」\n遥先輩にパーカーを手渡す。\n廊下の冷えた空気が私の足元を通り抜ける。「音楽がはじまったら、私は帰っちゃうからね。」\n練習場でもそう言われた。\nいざとなると不安に押しつぶされそうになる。\n――こんなところに裸で一人いるなんて……。\n「彩希ちゃんならきっと大丈夫。」\n先輩は私のプラカードの位置をなおしながら言う。\n……先輩も、これをこえてきたんだ。\nどうかこのまま、誰もきませんように。\n心臓の音が大きくなるのがわかる。\n――もう、やるしかない。\n音楽が流れはじめる。音楽が流れ出すと、おそれていたとおり、やっぱり誰かが様子を見に来る。\n誰か人が来ても、私はダンスをやめることは出来ない。\nわたしは誰の顔も見ないようにした。\n必死に音楽と振付のことだけを考える。――誰かと目があったら、絶対動けなくなる。\nその恐怖だけが、どうにか私の身体を次に動かす。\n――このポーズ、すごい恰好になってるかも。\nだけど、気にしてる余裕なんてない。\n"何も感じるな!考えるな!"\nそう自分に言い聞かせて私はダンスを続ける。3分間が終わり音楽がフェードアウトする。\n部活では静寂があるはずの時間、代わりに耳に届いたのは、ざわざわとした人の声。\n「なにこれ……」「全裸じゃん」\nざわつきが、だんだんはっきりしてくる。\nわたしの頭が言葉を理解しはじめた。「え、藤本さん……?」\nその中に知っている声を拾ってしまう。\n……あの声は、同じ班の早川くん。\n背中に冷たい汗が流れる。動悸が早くなる。\n声の方向を向くことができない。\n……無駄だとわかっていても私は顔をそらそうとする。\nどうしようもなくうつむいた視線の先、手洗い台のステンレスの板にわたしの姿が映っている。――だらしなく全部をさらけ出して、競売の動物みたいなプラカードを首から下げている。\n――なにこれ。変態じゃん。\nその瞬間、押し殺していた羞恥心が急に戻ってきた。\n今更のように、体を手で隠す。「どうして……。え、いじめ……?……まってて。今先生呼んでくるから。」\n気づいたときには、彼を押しのけて走り出していた。\n集まった人の間を無理やりかき分ける。とにかく逃げなきゃ。\n――でもどこへ?\n部室は3年生の教室を超えて向こうの校舎だ。\nなるべく人がいない廊下を走るつもりが、かえって人の数が増えてくる。裸で走る私を見て、上級生が驚いている。\n私の全身を恥ずかしさと惨めさが支配する。\n――どしん\nふいに人に当たり弾き飛ばされる。\n焦って前を見ていなかった。\nわたしは大きく倒れこむ。\nなんでこんなときに限って。急いで立ち上がろうとしたそのとき……\n――「うわっ、変態じゃん。」\nぶつかった野球部の子の声が降ってきた。\nその声に悪気はないのは分かっている。\nでもだからこそ、その一言がかろうじて持ち堪えていた私の心を完全に打ち砕く。「う~。もう……もうやだ~。もう裸見られたくない……。」\nこんなに人がいる場所なのに、涙があふれてきて動けない。\n選んだはずだった。納得したはずだった。\nでもただただ後悔だけがあふれてくる。\n――わたしの体は、こんな風に適当に晒されるものじゃない。\n――明日から、どんな顔して学校に来よう。\n苦しいことばかりで頭がいっぱいになる。\n「……どうして」\n――私の声は、どこにも届かずに消えていった。

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